糞日記

イェイ!人生!

10月13日

 カップ焼きそばの湯切り口の穴にひっついたキャベツを、男はひどく冷徹な顔のまま見つめていた。

 男は普段怒りをあらわにすることが大の苦手だ。そのせいか、このような自分の思い通りにならないキャベツなどにはめっぽう厳しい。

 「そもそもカップ麺のキャベツなどキャベツかどうか怪しいもんだ」そう吐き捨てると男は張り付いたキャベツごと蓋をゴミ袋に放り投げた。男はニコリともしない。

 

 本当のことを言うとカップ焼きそばのキャベツ、男はこれが大好物なのだ。それでも彼は自らの意に介さないキャベツを許すことが出来なかったのだ。

 彼は泣いた。己の器の小ささに。泣きながら蓋の上で温めておいたソースとふりかけと青のりをかけた。そして食べた。犯した過ちを振り払うようにすすり食べた。容器の端の方にソースが溜まっていて、そこにヒタヒタになったキャベツはお箸で掴み辛い。男は諦めた。男のお箸の持ち方が、それが原因で女の子にフラれるほどに汚いから。それに男はけっこうお腹いっぱいだったのだ。

 

 それでも男は、カップ焼きそばのしんなりとしたキャベツを愛している。たまごボーロやおさかなソーセージと同じくらい愛している。