糞日記

イェイ!人生!

6月7日

今日も今日とて僕はドトールにいる。

隣の席の人間は何故かジャック・スパロウのデッサンを描いている。なにゆえ今ジャック・スパロウを模写しているのかは謎だ。

 

1番安いアイスコーヒーを注文するためにレジに並んでいると、ごく普通、さも当たり前かのようにお婆ちゃんに横入りされた。「日常」に突如現れた「非常識」に僕は一瞬怯む。しかし驚きはしなかった。何故なら、お婆ちゃんにレジを横入りされるのは先月から数えてこれで3回目だったからだ。

 

「レジを横入りするお婆ちゃん」が現代日本に何名ほどいるかの統計は今のところ確認出来ていないが、2ヶ月のうちに3回も遭遇することは珍しいが無い話ではないだろう。そんなことよりも僕が驚いたのは「レジを横入りするお婆ちゃん」は恐ろしく「速い」ということだ。僕は平和の国のニッポン男児なので、レジに並んでいる際に限らず基本的に周囲に気を張り巡らす時間など日常生活には有らない。

やはり「戦争」を経験している、その差は大きいらしい。

 

「レジを横入りするお婆ちゃん」は音もなく背後から近付いてくる。恐らくこの時の「レジを横入りするお婆ちゃん」は何らかの特殊な呼吸法を使っており、我々は気配すら感じることは出来ない。こちらの肉眼が「レジを横入りするお婆ちゃん」を捉えた時にはもう遅い。僕と僕の前に並んでる人間の間にその細い体をねじ込み、次の瞬間には何事も無かったかのように、既に僕の眼前に「存在」しているのだ。

 

あくまでも憶測の域を出ないが、恐らく「レジを横入りするお婆ちゃん」は何らかの特殊な訓練を受けており、今日もどこか山奥の特殊訓練場では「レジを横入りするお婆ちゃん」が次々と育成されているのだろう。同じ訓練場では「電車の中でずっと怒っているヤバいおじさん」の訓練も同時並行で行われているに違いない。

 

目的は分からないが、このプロジェクトには巨大な権力、例えばの話だが、国家、が絡んでいることは間違いないだろう。「レジを横入りするお婆ちゃん」が国中に放たれ、全ての店舗のレジ周りは混乱と恐怖に見舞われ、日本経済は混沌に呑み込まれる。どこか安全な場所を求めようにも我々は逃げ出すことは出来ない。なぜなら既にすべての駅には「電車の中でずっと怒っているヤバいおじさん」が放たれているからだ。逃げ場がないと分かると我々は「闘う」以外の選択肢がないことに気がつき、武器をとる。

 

そして始まるのだ。「戦争」が。

 

 

とか考えることで「レジを横入りするお婆ちゃん」への怒りを静めながら、ズルズルとコーヒーを飲んでいる。季節はもうすぐ夏である。